浮き草蹇蹇録

はじめまして!このブログでは私の日々の生活や趣味(将棋、クラシック音楽など)を書いていこうと思っています。一応19歳の大学生です!

イチロー

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3月21日、イチロー選手が現役を引退することを発表しました。

加齢によるパフォーマンスの衰え。引退というふた文字は数年前から囁かれるものとなっていました。

1人のイチローファンとして引退を受け入れるという覚悟はしていたのですが、いざその日が来てしまうと今まで築き上げてきたそのふた文字を受け入れるためのプロセスというのが、自分の中でガラガラと音を立てて崩れ去っていきました。

 

正直に言います。悲しいです。

私が野球を始めた理由、それを7年間も続けられた理由。そしておそらくですが留学を決心した理由。

イチローはそれらの理由の中心にどっしりと腰を据えていつも私を導いてきました。

 

イチロー、あの世界のイチローが日本のために全力を尽くした第一回WBC。そして熱を出し学校を休んだ日には必ずみていたNHKBSの大リーグ中継でのその雄姿。

それがまさしくぼくに野球を教えてくれ、そしてのめり込ませた要因です。

 

イチローが打てば安堵し、打たなければ心配する。

盗塁を決めればイチローを目指し家の裏の公園を走り、ファインプレーをすればその美技に酔い目を輝かせる。

突然ニューヨークヤンキースへの移籍が決まった日は自分のことのように驚いたし応援した。

成績が落ちてからは一本ヒットが出るだけで心から嬉しかった。

スーパープレー集は擦り切れるほど見た、何度も見た。

 

ぼくの人生を形作っているものを1つのパイ状の球で表すと、イチローは小食の女子が一回で食べるくらいの量、それでも確かにぼくを形作っている。

 

 

今日の試合、第1打席が終わったタイミングでイチロー引退の報が届きました。

驚きました、心底驚きました。しかし不思議なことに悲しくはならなかった、涙は一粒も落ちませんでした。

それはおそらく脳が一回で処理できるキャパシティを超えていたから。

にわかに頭が痛くなり始めたので眠ることにしました。

 

起きるとちょうど長い長い延長戦が終わりこれから記者会見という時間でした。

眠い目をこすりながら講義の準備をし会見の情報をスマホの小さい画面から享受しながら教室に足を運びました。時間は11時5分前、言うまでもなく講義開始5分前です。

しかし、しかしながら、教室の前についても足がこれ以上進まないのです。何かに取り憑かれたかのように金縛りにあったのかのようにビクともしない。

悪戦苦闘の末、その硬直を解いたのは割れんばかりのシャッター音、そしてイチロー本人からの引退宣言。

 

ぼくはもう一度動けなくなりました。もう足は進むのに金縛りは解けたのにそれでもその場から動けない。いや、動くだけの意思を持たなかったのです。

ぼくはその場にへたり込みました。教室の前に長椅子があったのが何より幸いで、そこで重いリュックを下ろしジャケットを脱ぎました。

ふぅっと息を吐き、ゆっくりと吸い込み、そしてもう一度息を吐く。そうでもしないと過呼吸で倒れるかもしれないと思ったからです。

イチローは端的に引退の理由を説明しすぐに質疑応答に移りました。

 

「後悔はないか」記者の1人がそう尋ねると、イチローは迷いなくこう告げました。

「あんなものを見せられたら後悔などあるはずがない」

と。

 

満身創痍だったのだろう、全てを出し切ったのだろう。そりゃそうだ、太古の昔からヒーローに訪れる結末はハッピーエンドだけだと決まっているのだから。

ぼくの心を覆っていた靄は晴れ、そして10分遅れで教室に入りました。

 

後から聞いた話ですが、会見の中でイチローはこのようなことも言ったらしいのです。

「最後に一本出なかったのは残念だ」

 

結局のところ彼は人間なのです。超人怪人のように語られることはあれど結局は血の通った1人の鈴木一郎。

会見の最後は

「お腹すいたよ〜」

と言うなんとも可愛らしい言葉で締められました。

その人間臭さが、これはぼくの持論ですが、イチローイチローであった理由、チームメイトからファンからそして野球の神様から慕われた理由であったとぼくは思います。

 

会見が終わり試合中の様子をネット上で見ることができました。

そこには東京ドームを360°埋め尽くし心の底から拍手と歓声を送るファンの姿。

悲運の天才フェルナンデス投手が遺したヘルメットをかぶり先頭打者ホームランを放ったゴードンが、師と呼ぶイチローを思いグラウンドで男泣きをした。

日本球界最高のサウスポー、メジャー初登板を終えた菊池雄星イチローとの抱擁の後、帽子で顔を隠し肩をブルブルと震わせながら大粒の涙を流した。

実況は5分弱の間球場音声だけを流し、隣にいた解説の声は震えていた。

ネットでは世界中から#ThanksIchiroのメッセージが届いた。

 

こういうことなのだろう。これが彼の人間性であって皆から慕われた理由の証明なのです。

我々は彼のスーパープレイだけに見惚れたわけではない。彼の全てが好きだったのです。

 

 

ふと気づくと、ぼくは先ほどと同じ長椅子に腰掛けていました。

ひとつ違うのは、眼鏡を外し肩を大きく震わせただ1人で泣いているということだけ。

 

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イチロー選手が今後も自身の進みたい道を進むことができることを願ってこの記事を結ばせていただきます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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